スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[文字原稿版]Headlight on lady-Scene3 一杯のお茶をどうぞ。-

ちょっと気まぐれでHeadlight on ladyの文字原稿を更新してみました。
未だに前回の話しも文字原稿のみですが、変に時間が空くよりは定期的に更新された方が良いんじゃないだろうかと判断しました。
漫画ってめちゃくちゃ難しいですから、毎日絵を練習しつつ、先に物語を書き上げてしまってから描くのも良いかななんて思っていたりします。やっちゃいけないのは放置が続いて消滅していくことだろう…と。
ということで、第3話公開です。


 午前9時、俺は目前の茶柱を黙って眺めていた。それから、湯呑みに口をあて一口すする。お茶っ葉の和やかな香りと力強い渋みに心が落ち着くのが分かる。平和だ。何か大切なことを忘れている気もするが、忘れているようなことなんだからきっと些細なことに違いない。
 そうやって強引に納得しようとしているところに見知った顔が割り込んで来る。
 とても嬉しそうだった。何がそんなに嬉しいのか知ったこちゃないが、彼女は何か企むような表情で笑っていた。まるで、悲しい事なんて何もないような笑顔、頬にうっすらと残った涙の跡がミスマッチでとても不思議な感じがした。
 「美味しい?」
 「ああ美味しいよ。なんか、悪いな」
 「紅茶とかの方が良かったかしら?ごめんねウチは年寄りしかいないからさ」
 「ん…、いや、とても落ち着くよ」
 「良かった!」
 呑気に笑う。
 「あのさ…」
 「なーに?」
 「俺は確か、”学校行こう”って言わなかったか?」
 「あら、…そうだったかしら?」
 彼女はそっぽを向いて恍ける。しかし、すぐに向き直ると悪魔のような笑みでこう呟いた。
 「ちゃっかり上がり込んでお茶飲んでる人の言う台詞じゃないけどね」
 「うっ…!」
 言葉もない。だが、俺だって黙っちゃいない。
 「それはあれだ!おまえがこんな顔じゃ学校行けないとか、俺に泣かされたと言い触らすとか、女の敵だとかいろいろ言うから!」
 「そんなの、あんた1人だけでも学校に行けば良かっただけじゃないの」
 「空気を読むって奴だよ。ほら、俺って超良い奴だろ?」
 「皆は今、教科書読んでるけどね」
 後半のくだりを完全に無視してこんなことを言う。
 「どっちにしろKYってことか」
 「そうね。まあ、どっちのKYが良かったかはあえて言わないけどね」
 「…あのな~、そりゃさっきまでこの世の終わりみたいな顔してた奴が言う台詞かよ」
 「なんの話かしら?…ほら、お茶冷めちゃうわよ」
 そういうと、彼女はそそくさと台所の方へ消えて行った。
 仕方がないのでお茶をもう一口いただく。お茶は少し冷めてしまっていて、さっきより渋みが増していた。
 それから、周りを見渡す。平屋の木造建築。これと言って特徴らしい特徴はないが、その落ち着いた内装はまるで祖父や祖母の住む田舎に来たような感覚だった。上がり込む時に見かけた表札には「雪川」と書かれていた。
 そう、どういう訳だか俺は今、学校にも行かずに今日知り合ったばかりの女の子の家に上がり込んでいる。 なんでも、今日は誰も家にいないので、ぜひ上がって行くようにとのことだった。
 「そうだー!ねえ、あんた名前はー?」
 台所の方から声が響く。こっちに来て話せば良いのに何をやっているんだろうか。
 「そういうおまえはー!?」
 聞き返す。
 「こういうのは男の方から告げるのが最近のKYよーーー!」
 「レディーファーストって言うだろーーー!?」
 居間と台所を結んで超理論が飛び交う。多分2人の間の世界では風が吹く度に桶屋が大富豪になっているに違いない。でも、まあ、名前ごとき隠すものでもないから俺から告げることにする。
 「まあ、いいやーー!桜井ーー!桜井優季だーー!」
 今までよりも一層、声を張り上げた。
 「うるさーーーい!!」
 その言葉と一緒に羊羹の乗ったお盆を持って雪川(仮)が戻ってきた。お盆を居間のちゃぶ台に置く。美味しそうな羊羹の横には自己主張の激しい大きな毛筆が印象的な紙切れが添えてあった。そして、その紙にはこう書かれていた。
 ”契約書”。
 ふと、胸騒ぎがして、俺はとっさに湯呑みを口に運んだ。
 お茶は冷め切っていて渋みが口いっぱいに広がった。
 「さて…」
 彼女が、雪川が、ゆっくりと、重々しくその口を開いた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

twitter
    follow me on Twitter
    プロフィール

    砂塵

    Author:砂塵
    GIMP2でお絵描きしています。
    主にイラスト練習、プログラミングなどを扱っているブログです。

    Skype始めました。
    SkypeID:sazinn-gimp
    出没時間:平日21~26時、休日(土・日)

    Pixivはじめました
    微エロな絵を載せることがありますので、そういうのが苦手な方や嫌悪感を覚える方はご注意ください。

    カテゴリ
    リンク
    最新記事
    月別アーカイブ
    最新コメント
    RSSリンクの表示
    FC2カウンター
    FC2ブログランキング

    FC2Blog Ranking

    参加ブログカテゴリ
    にほんブログ村 IT技術ブログ プログラム・プログラマーへ
    にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。